気分変調症
気分変調症とは、いつも抑うつ的で悲観的になり、生きることに絶望的である精神状態をいう。抑うつは軽症であるが、殆ど持続的に存在しており、良い日もあれば悪い日もあるが、晴れることはなく、ほとんどの日はどんよりしている。 抑うつ症状(絶望感、低い自己イメージ、罪悪感、無価値観、社会的な引きこもり、食欲、睡眠、エネルギーに問題がある)が常に存在しているが、うつ病に典型的な抑うつ感情・制止症状は軽く、一日のうち大きな変動はなく重症度は遥かにが低いとされる。 しかし、「生きていることに価値を見つけられず、絶望感にさいなまれ、生きていること自体が苦痛」となっていて、その重みに耐えかねるかのように、不登校、引きこもり、仕事が続かないなどの社会機能障害を来たす。 パーソナリティ障害(特に境界性パーソナリティ障害)を伴うことが多く、些細な心因による気分変調に周りは振り回されやすい。
気分変調症は、かつては「神経症性うつ病」(それなりの性格特徴と原因となる心因がある)と同義語であったが、病理学的には定義の混乱(うつ病なのに内因性ではない)を招いたので現在は「神経症性うつ病」名は排除された。
症状の特徴
- ◎絶えず悲観的な考えに囚われてしまう
- ◎自分の存在など価値がないと思っている
- ◎楽しいことなんて、なにもない
- ◎悲嘆や苦しみを感じて、ため息ばかりついている
- ◎いつも食欲がない
- ◎よく眠れない
- ◎エネルギーがでないし、疲れやすい
- ◎生きることの意味、価値がわからない
- ◎社会と接触したくない、ひきこもり
鑑別すべき症状と病気
- ①正常な悲しみであるか:思春期・青年期に多い実存的な悩みから来る悲観的な絶望感、無力感との鑑別は難しい。気分変調症では思春期以前から徴候が自覚され、比較的早期から思春期失調症候群の症状(不登校、身体醜形障害(症)、摂食障害、リストカットなど)を伴うことが多い。
また、慢性的にストレスフルで困難な生活環境から来るストレスに対応した反応性の症状も除外する。 - ②慢性うつ病:うつ症状が重症で、うつの診断基準に適合すればうつ病とする。
- ③双極性障害:躁または軽躁のエピソードがあれば除外する。
- ④身体的疾患:貧血、甲状腺機能低下症は長く続く抑うつ症状を引き起こすので、人生後期の発症ではこれらを注意する。
治療について
原則的に薬物療法の効果は疑わしいと考えている。それよりも、心身両面の歪みのバランスの回復を目指す。身体的には、思春期失調症候群、パーソナリティ障害と同じように生活スタイルを直し身体的な健康度を高めるべくレジリエント生活・食事療法を行う。
こころの回復としては、レジリエンスを高めるようにマインドフルネス・レジリエンス療法を行う。