身体醜形障害(症)研究①―HSP(敏感すぎる)という気質について
私たちの周りには、細かいことを気にせず、大まかで楽天的な人もいれば、小さいことを気にして敏感に反応して、くよくよして悲観的な人もいます。
精神科を受診する人たちの中には、自分の中の極端な敏感さに悩まされている人が少なくありません。その敏感さを性格のせいだと感じ、自分を責め、苦しんでいるのです。中にはその敏感さのせいで、必要以上に自分の容姿に悩み身体醜形障害(症)の症状に苦しむ人もいます。
近年、アメリカの心理学者、エイレン・N・アーロンは、このような「小さなことを気にしてしまう」のは、性格の問題ではなく、「五感を超えた感覚の過敏性」という気質の問題であるとしHSP(Highly Sensitive Person―とても敏感な人)という概念を作りました。
「気質(きしつ、かたぎ、temperament)」とは、人間や哺乳類などの動物の集団が先天的に持っている刺激に反応する行動特性であるとされていまるが、人では外からの刺激に対する、心の中での受け止め方の特徴をいいます。例えば、小さなことですぐに怒る、多少のことでは腹が立たない、などです。
人間には適度な刺激があって神経システムが適度の覚醒していることが必要であり、神経の高ぶりが無さ過ぎると、気分がダレて効率が悪くなるし、一方高ぶり過ぎると、苦しくなりぎこちなくなり混乱を来たす。ちゃんと考えることが困難になり、身体のコントロールもきかなくなったように感じる。丁度良い神経の高ぶり具合というのは、この両極の真ん中にある。
心理学は、人間は最適レベルの神経の高ぶりを必要とすることを発見したが、HSPは神経の高ぶりに圧倒されているともいえる。
同じ刺激に対しても、どれくらい神経システムが高ぶるかは個々人によって差があり、ネズミ、ネコ、イヌ、ウマ、サル、人類のどの高等動物にもこの差異は見られ、刺激に対して「より敏感に反応するもの」の比率は大体同じで15から20%であり、遺伝的に決められている場合が多い。
動物で敏感なもの同士で交配させると、数代で「敏感な血統」が出来上がる。
敏感さは気質的特徴の中でも最も個体差を示すものとされている。
「性格personality」とは、遺伝的な気質の上に、各人の生まれ育った環境、両親との関係などに基づいて作られた価値観から生まれる各個人の行動や意欲の傾向のことである。(Characterは気質に近い特徴的な性格をいう。)
例えば、本来穏やかな気質を持って生まれても、暴力沙汰が日常茶飯事、‘なめられたら負け’、というような環境で育てられれば、「すぐに怒鳴る怖い人」になってしまうように。
HSPの概念が出来たことによって、「気にしすぎ、くよくよしてしまう」のが、自分の性格の弱さのせいではないことや、敏感な気質には多くの利点もあることを知り、生きづらさに対処できるようなって来た。
また身体醜形障害(症)に対する治療のアプローチにおいても、症例によってはHSPに対処することで開かれる解決の道も出て来るように思われる。
HSPに共通する特徴を見てみると、
1)刺激に敏感に反応する
2)人の影響を受けやすい
3)直観力があり、ひらめきが強い
4)慎重で、自分のペースで行動することを好む
HSPは隅々まで目を配り丁寧に見直すので仕事のミスが少なく完璧であることが多い。そのため一度に多くのことはこなせず、慎重で行動は抑制的になる。
ストレスに対する耐性が低いので、傍で見られていたり、せかされたりすると緊張して頭が思うように働かなくなるので、周囲に心を乱されることがなく自分のペースで慎重にゆっくり物事を進められる環境でこそ力を発揮できる。
5)内的生活を大事にする
また敏感な五感、鋭い直観力、豊かな感受性や共感性と言ったHSPの特性は「感動する才能」をもたらし、様々な芸術に感動する。
さてあなたがHSPであるか、あるいはその程度をチェックしてみましょう。
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