自律統合性機能(Autonomous Integrity Function :AIF )と美容整心精神医学(Cosmetic Orthopsychiatry:COP)の概念
量子論は、相対性理論までの古典物理学が示してきたような物質的世界は決定論的な因果律が成立することを否定し、分子生物学、脳科学の進歩は、人間の生物学的な機序も根源的なところでは、常に偶然性に依って決定されるということを明らかにしてきた。
つまり、現代の科学は、物質からなる生命から宇宙、精神の全ての現象が偶然の結果でしかないことを教えるが、しかし現実的には、ミクロからマクロまで生命から宇宙に至る自然現象と人の精神現象には、何か超越的な存在の差配としか思えない現象に溢れている。
そこで、私は有機物から無機物まで、すべての物質の世界・森羅万象(生命、身体、社会、自然、宇宙)にはその営みを統合、調整を図る規律、根元的摂理があると考えるようになった。
また、私は精神・こころには自我のシステムを超越したメタシステムとしての領域(霊性spirituality)があり、それがこころと身体という次元・カテゴリーの違うものの間に介在し、それらを繋ぐものとしてあるのではないかと考えた。その霊性と根元的摂理は、個の内的世界から宇宙全体へ連続し統合の中心軸をなしていると考え、私はそれを自律統合性Autonomous Integrityと名付け,その機能的役割を自律統合性機能Autnomous Integrity Function:AIFとした。(参照*自律統合性機能についてーその1,自律統合性機能についてーその2)
また、量子論や脳科学、科学哲学から精神医学、生物心理学にわたる考察から、あらゆる物質が物質波de Broglie waveという波動であると量子論が示したように、精神にも波動性があり「精神波psychic wave」の存在を想定する(こころは波である)のが妥当であると考えるに至った。同様に霊性にも霊性波spritual waveの存在を想定した。(参照*精神波―総説)
この自律統合性と精神波・霊性波の二つの仮説による新しい心身の概念から、人の健康を次のように説明する。
心身の健康状態とは、身体波(物質波)と精神波、霊性波の波動が調和して干渉し共振していることを意味し、そのリズム振動を指揮、統合するのが、(ヒトの内的世界から、身体をはじめ宇宙万物の調和をはかる)自律統合性機能AIFであり、いずれかの波動の乱れから身体波、精神波、霊性波のリズム振動が失調しAIFの機能が揺らぐと、健康を損ない、やがては病的状態に至ると理解する。
人の心身の状態は、身体の「神経系」、「内分泌系」、「免疫系」システムに「精神(こころ)」の4つの系が相互に複雑系で影響しあう状態であるが、自律統合性Autonomous Integrityがバランスをとり、健康を維持していると考える。(参照*自律統合性、「ほんとうに美しくなるための医学」)
自律統合性機能AIFは、身体においては、「恒常性ホメオスターシス」の概念に相当し、精神においては「レジリアンス」と言われているものの概念が近いものと考えているが、しかしAIFは物質の量子構造から生命・宇宙システム、こころまでを統合する壮大で絶対的なものである。
一次的にしろ、二次的にしろ自律統合性機能AIFの僅かな機能不全で、物質波、精神波、霊性波のリズム振動、共振が失調すると健康状態を逸失するが、その状態を自然回復可能な領域reversible territoryと、医学的支援なしでは回復不能な領域irreversible territoryに便宜的に分けて、前者の段階は病気未満の様態とし、前者が後者に移行した様態が病的状態と説明すると理解しやすいが、しかし実際には、大半の病気治癒の実際は、医学的な治療によるものではなく、自律統合性機能AIFが身体波、精神波、霊性波の共振・リズム振動を回復させることにより自然に治癒するのである。これが現在「自然治癒能」と言われているものに相当すると考えている。
前者の、つまり正常から病気未満の領域で、主として身体的な健康を扱うのが、健康医学、美容医学、抗加齢医学であるとすれば、同領域の、主として精神的な健康を扱う医学があっても良いのではないか、と考えるに至った。
そこで、精神波、霊性波の波動のリズムが先行的に失調し、精神障害の範疇までには至らないが、精神的、霊的に健康的な生活に支障が生ずる「こころの領域」を扱う医学として「整心精神医学Orthopsychiatry」の概念を提案する。
「整心」の意味するところは、心のバランスを失った精神状態を整え復調することであり、語源は整形外科、整容外科に倣った。
整心精神医学の対象となるものは、精神医学の範疇に入る精神障害ではなく、かといって、健康な生活を送るには支障のあるような、病気と健康の境界領域にあるこころの状態を基本的に扱う。それをスぺクトラムで考えると、精神障害に近い方では気分変調症、摂食障害、身体醜形障害(症)や境界性人格障害、失調型人格障害が、遠い方では思春期の失調と考えられる不登校、家庭内暴力、自傷行為、行為障害などが該当すると考えている。
さらには、「生きること、存在すること自体」を自明なこととして肯定出来ないために「尊厳」を持って生きることが出来ず、うまく社会に適応できずに苦しんでいる人に対して霊的な健康の獲得をめざすものでもある。(参照*WHOの健康の定義)
一方、美容精神医学Cosmetic Psychiatryという新しい概念は、「美しさ」を求める美容医学の一つである「美容外科」が外科手術的な身体的アプローチをし、「美容皮膚科」が皮膚科的な身体的アプローチをするのに対して、「美を求めるこだわり・悩み」に対して心理・精神的なアプローチをする美容医学の一つとしての精神医学のことである。
ただし、ここでいう「美しさ」とは、外見の美のみに止まらず、「心身がより健康で、幸福感に溢れる超健康的な精神の状態、ライフスタイル(joyful and beautiful superhealthy life)」も含むものとする。
人が生きて行くうえで遭遇する「生きることの悩み」に向かい合い、こころの平衡を取り戻し、より前向きにポジティブな,単なる健康以上の超健康(スーパーヘルス)的な生き方を目指す、いわば心の美容を図る精神医学である。
美容精神医学の対象となるものは、「外観・美容のこだわりの悩み」から、思春期・青年期の「モラトリアム・アパシーなどアイデンディティ確立に伴う悩み」、社会的共同体から退出する「思秋期の喪失・アイデンシティ再構築の悩み」、死が眼前となった「老年期の不安と絶望など終焉に向かう悩み」などがある。
美容整心精神医学 Cosmetic Orthopsychiatry:COPは、上記整心精神医学と美容精神医学を合わせたものであり、図②に示すようにこころの健康と健康と病気の境界領域から健康、超健康を目指す精神医学の新しい領域を扱う概念を言う。(参照*美容整心精神医学の概念)
美容整心精神医学COPの治療に対する基本的な考えは、自律統合性モデルが示すように身体波と精神波、霊性波の乱れをとり共振させリズム振動を回復させることにある。つまり心身相関、心身一如の考えから、身体とこころの両方にアプローチしてこころの波動を整え、かつAIFを強固にする。
心の方程式D=P×Cm×Cph×Iでも環境CはこころCmと身体Cphの要素で決まるとしている。(参照*心の方程式)
こころに対しては、クライアントの気持ちを受容しながらも、院長のこれまで得てきた知識と経験から、独自の人生観、宇宙観を交えてのカウンセリングをしてケアをして行く。
さらには、レジリエンスを強化するように、マインドフルネスレジリエンス療法を原則的に行う。(参照*マインドフルネスレジリエンス療法、レジリエンス心理学)
身体に対しては、副交感神経優位な免疫力を強化するようにレジリエント生活・食事療法を行う。(参照*レジリエント生活・食事療法)
これらで心身の超健康を目指す。