エリクソンのライフサイクル⑤‐Ⅵ期
2017年04月17日
前成人期、青年後期( 23-35歳) ―「親密/孤立」―親密性を持つことー家族や同僚との結びつき、結婚に人生をかけ、価値を見出す
青年中期、思春期後半の後の18歳から35歳くらいを青年後期、エリクソンでは前成人期としている。アイデンディティの確立後の成人(壮年)に至るこの期の人間関係を満たすためのテーマは、エリクソンは「親密性」連帯性であるとしている。同時にこの期間は神谷美恵子が言うように「職業の選択、恋愛、配偶者の選択」という人生本番への関所が構える時期でもある。この時期は多くの人が社会に出て行く頃であるが、今までよりも人間関係で親密な関係性を持つことで、自分の価値を見出し、社会に価値を生みだして行く、というのがエリクソンの考えである。
仕事では、相手と連帯する中で、相手の為に自分を与える(自己放棄)くらい信頼できる親密な関係性ができると仕事も非常に上手く行き、生産性も非常に高まるとしている。
親密性は、恋愛においては特に孤独を癒すものであるが、相手の中に自己放棄できるような域に達すると(結晶化)、結婚という形で相手に自分を賭けることが可能になる。自分を放棄することが可能になるのは、放棄しても自分を失わない強い自我、アイデンディティが確立している必要があり、従って思春期・青年期を上手く乗り越えてアイデンディティを確立し強い自我が出来ていないと、親密性のある人間関係が出来ず、孤立し孤独感に苦しむことになってしまう。
しかし、現代では精神社会的猶予期間(モラトリアム)の延長がこの期にずれ込むことしばしばみられ、それは非婚であったり、結婚しても容易に離婚する等の現象として現れている。
エリクソンは、人生の各時期の危機的な課題を見出してライフサイクルモデルを描いたが、それはその時期に合った人間関係を満たす必要性を言い、。サリバンは人間は、自分の存在や意味は人間関係の中にしか見い出せないと言い、ともに人間関係の重要性をいっているのである。エリクソンの各期に示された課題は、人間関係を満たしていくための行動の指標でもあるといえる。
自分にとって必要な人間関係はエリクソンが示したように、時期によって異なっていて、乳幼児期は、母親あるいは母親的な人との関係が重要で児童・学童期では母親より友達が大事で、中学生くらいに(前思春期、思春期)になると、多くの友達よりも仲間、親友、尊敬できる先生が大切になってくる。成人期(前成人期、青年後期)になると仲間や同僚に加えて新しい家族との関係を築き始め、仲間の中から自分を賭けられるような相手を見つけ結婚する。
思春期・青年前・中期の身体的心理的激変に加えて前成人期・青年後期の職業の選択、結婚というような社会的・個人的課題の重さに耐えるには、生まれ付きの素養はもとより、どのような環境で生まれ育ったかという、それまでの成育環境が大きくものをいう。
それらになんらかの問題があると成人期を順調に乗り越えられず、社会生活に支障を来たしたり、あるいは精神障害を来しやすいので、精神医学的には、この期は一つの「危機」として捉えられている。
青年期の難関をどう切り抜けるかは人さまざまで、遊び半分でというほどの身軽さや形式的とでもいえるようなそつなさでで潜り抜ける青年もいれば、悠然と構えるもの、不器用に試行錯誤を重ねて泥まみれになるものもいる。まさしく千差万別である。